第8話:売却・合併等があった場合の取扱い

第8話 売却・合併等があった場合の取扱い

■現行の事業承継税制では、民事再生、会社更生の時に、その時点の評価額で相続税を再計算し、超える部分の猶予税額を免除する手当はなされています。しかし、贈与・相続時から5年後以降に株式の譲渡や解散等をした場合、承継後の会社の経営状況、業界の全体の景気状況によって、株式の評価が変化し、相続時の株式評価との間に乖離が生じる場合がありますが、このような乖離に対する減免制度はありません。

■特例事業承継税制では、経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合には、売却、合併による消滅、解散時においても、現行の事業承継税制での民事再生、会社更生と同様の減免制度の手当てがされます。

■経営環境の変化を示す一定の要件とは以下の5ケースのいずれかに該当することを言います。(特例認定承継会社が解散をした場合にあたっては5を除きます)

1.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社の経常損益が赤字であること

  直前の事業年度-2期 直前の事業年度-1期 直前の事業年度
該当例① 赤字 赤字 赤字
該当例② 赤字 赤字
該当例③ 赤字 赤字
該当例④ 赤字 赤字

2.直前の事業年度終了の日以前3年間のうち2年以上、特例認定承継会社の売上高が、その年の前年の売上高に比して減少している場合

   直前の事業年度-2期 直前の事業年度-1期 直前の事業年度
該当例① 前年売上より減少 前年売上より減少 前年売上より減少
該当例② 前年売上より減少 前年売上より減少
該当例③ 前年売上より減少 前年売上より減少
  該当例④ 前年売上より減少 前年売上より減少

3.直前の事業年度終了の日における特例認定承継会社の有利子負債の額が、その日の属する事業年度の売上高の6か月分に相当する額以上である場合

4.特例認定承継会社の事業が属する業種に係る上場会社の株価(直前の事業年度終了の日以前1年間の平均)が、その前年1年間の平均より下落している場合

5.特例経営承継者が特例認定承継会社における経営を継続しない特段の理由があるとき

■前述のケースに該当しない場合でも、特例対象非上場株式等の譲渡等の行われた日により、次の場合も「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」に該当するものになります。

1.譲渡等が直前の事業年度終了の日から6月以内に行われた時、前述の1(赤字要件)、2(売上高要件)、3(有利子負債要件)について、それぞれ「直前の事業年度終了の日」を「直前の事業年度終了の日の1年前の日」とした場合にそれぞれに該当する時についても、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」に該当するものとされます。

  ・赤字要件の場合(売上高要件の場合も同様)

  直前の事業年度-3期 直前の事業年度-2期 直前の事業年度-1期 直前の事業年度 譲渡等年度 (注1)
該当例① 赤字 赤字 赤字  
該当例② 赤字 赤字  
該当例③ 赤字 赤字  
該当例④ 赤字 赤字  

  ・有利子負債要件の場合

   直前の事業年度-1期 直前の事業年度 譲渡等年度 (注1)
該当例 有利子負債≧6か月売上  

  (注1)譲渡等は直前の事業年度終了の日から6月以内に行われた

2.譲渡等が直前の事業年度終了の日から1年以内に行われた時は、前述の4(株価要件)について、「直前の事業年度終了の日」を「直前の事業年度終了の日の1年前の日」とした場合に該当する時についても、「経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合」に該当するものとされます。

  直前の事業年度-2期 直前の事業年度-1期 直前の事業年度 譲渡等年度(注2)
該当例 対象株価120円 対象株価90円 対象株価130円  

  (注2)譲渡等は直前の事業年度終了の日から1年以内に行われた

■再計算について

1.解散の場合

  解散時点の相続税評価額で計算されます。

2.譲渡又は合併の場合

  譲渡・合併の対価で再計算を行い、その時点の相続税評価額の50%が下限となります。

また、評価時点から過去5年間の配当や過大な給与等は税額に加算しなければなりません。

X社の株価総額の推移(イメージ図)




出典:中小企業庁「平成30年度事業承継税制の改正の概要」