第14回 2.10 事業承継後の手続きと対策(資産の面から)

2.10 事業承継後の手続きと対策(資産の面から)

贈与契約書、事業譲渡契約書等が作成されているときは、その契約内容に従い、資産の移動、債権債務の処理を行っていきます。ここでは、売掛金、買掛金、金融機関への借入金返済について整理していきます。

(1)売掛金などの債権の処理

先代事業主が売掛金債権を保有する取引先とは事業承継前に、後継者への事業承継と取引口座の変更については、話がついていると思います。手続きについては、先代、後継者が個別に処理を行うのであれば、各々が処理を行っていくことになります。具体的には、先代は、従来からの売掛金を回収していきます。一方、後継者は販売先等と新たな口座を開き、売掛債権の管理を行っていきます。

また、売掛金が多い場合、債権譲渡で行うのであれば債権譲渡契約に沿った手続きを行います。事業承継前後の新旧口座への誤入金には注意が必要です。

(2)買掛金などの債務の処理

先代事業主の買掛金等の債務を保有する取引先についても、事業承継前に、債務の処理につき、調整を済ましていることは必要です。通常は、先代、後継者が個別に処理を行うことが多く、その場合は各々が処理を行っていくことになります。具体的には、先代は、従来からの買掛金を精算していきます。一方、後継者は仕入れ先などと新たな口座を開くために取引条件(保証人、担保などの調整)の取り決めを行います。

また、債務引受で対処する場合は、免責的債務引受、併存的債務引受になるのか、調整は売掛債権の場合よりは複雑なものになります。事業承継後は約定した条件で債務処理を行います。

(3)金融機関への借入金の返済

先代事業主の金融機関からの借入金についても、事業継承前に、先代と金融機関の借入条件、金融機関の後継者に対する与信判断などにより、調整がなされます。債務を引き継ぐのであれば、免責的債務引受、併存的債務引受など金融機関との事前に調整した条件で手続きは進めていきます。また、先代の借入は先代が返済し、新たに後継者と金融機関が条件を設定し、新規借り入れをするのであれば、返済と借入の時期には、十分注意を払う必要があります。

(赤石 悦男)