第20回 3.4 社内に後継者候補がいない場合の後継者探し

3.4 社内に後継者候補がいない場合の後継者探し

■後継者人材バンク

 事業承継・引継ぎ支援センターにおいては、個人事業主を含め、後継者不在の中小企業である譲渡側と譲受側のマッチングを支援しています。特に個人事業主が営む事業の第三者への承継を支援するため「後継者人材バンク」事業が行われています。これは個人事業主の後継者問題の解決と同時に創業の促進を図るものでもあります。

 事業スキームは、後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と創業を志す個人起業家をマッチングし、店舗や機械装置等を引き継ぐものです(図表※※)。マッチング後の一定期間は起業家と先代経営者が共同経営を行うことによって、経営理念や蓄積されたノウハウ・技術等を引き継ぐとともに、地域の顧客や仕入先、取引金融機関等との顔つなぎも併せて行うこととしています。後継者人材バンクは、有形・無形の経営資源を引き継ぐため、ゼロから起業する場合に比べ、大幅に創業リスクを低減させることができるという特徴を有しています。

図 後継者人材バンクのスキーム図

■後継者人材バンクの利用例

(地域の飲食店が「後継者人材バンク」を活用して若者に引き継がれたケース)

 地元で20 年以上、人気のラーメン店を営む個人事業主A(65 歳)は、加齢とともに、体調面に不安を感じはじめていた。後継者がいなかったため、商工会議所に今後の対応を相談した。

 一方、起業家B(23歳)は、地元で中華料理店を創業するため、商工会議所が主催する創業セミナーを受講し、開業の準備を進めていた。Bは、商工会議所から、Aが後継者を探しているとの情報を得て関心を持ち、事業承継・引継ぎ支援センターの「後継者人材バンク」の活用を勧められたことから登録を行った。

 その後、複数回の面談の場がもたれ、双方が基本合意に達したことから、税理士や商工会議所の支援により事業承継計画が策定され、資産譲渡による事業引継ぎが実施された。Aは、従業員や常連客、関係者に迷惑をかけずに済んだことに安堵して引退した。

 現在、同店は、若い店主に替わり、店内の一部改装や中華料理のエッセンスを加えた新メニューの開発により、地元企業を中心とする常連客に加えて、学生をはじめとする若年層の顧客も増えてきている。

(山﨑 肇)