第2回 1.2 後継者の選定

1.2 後継者の選定

(1)後継者選定の留意点

事業承継にあたり後継者を決めることは事業承継の成否を左右する重要な要素となります。個人事業の場合その多くは親族内承継です。
中小企業庁の調査によれば子ども81.1%、配偶者8.1%、兄弟親族0.9%、その他親族6.9%と全体の97%が親族内承継となっています。

図表1 個人事業主と先代との関係 (出典:事業承継ガイドライン)      

従って個人事業主の場合、早期に親族内後継者を確保することが重要であるとともに、後継者候補が事業を承継したいと思える経営状態を確保することが不可欠と言えます。

また後継者育成の手法としては、内部昇格(他社勤務経験ありの場合も含む)のケースが64%と半数を占めています。加えて図2の通り一度は他社経験を経るケースも 54%存在します。業種特性に合わせて適切な経験を積ませる必要があると考えられます。

図表2 個人事業主の就任経緯 (出典:事業承継ガイドライン)

(2)後継者候補について親族間の合意をとること

前述した通り個人事業の事業承継においては親族内承継が大半を占めており、会社形態の中小企業の事業承継と比較しても顕著になっています。
特に個人事業の場合、事業承継の可否が親族にとっても重要なポイントとなるため全員が納得できる後継者の選定と育成が重要です。
 後継者は親族が納得できる人物の指名が望ましいと考えます。人望、業務経験など様々な要素が求められますが、親族が「この人なら」と納得できることが肝要です。
 一般的に長男が望ましいとされていますが必ずしも年長者が良いとは限りません。親族が納得でき、かつ関係者同士の利害関係等にも配慮が必要です。
 選定に当たっては先代と後継者候補とが直接事業承継について対話し合意しておくことが重要です。
 次に後継経営者としての資質・ノウハウ(経営能力、金融機関等の対外関係者とのコミュニケーション能力、人脈形成、従業員からの信頼獲得等)の吸収などについて時間をかけて学ばせる機会を作ることも求められます。

(武 篤志)