事業承継が行われ、後継者が、新たな個人事業主となります。後継者は、単に先代個人事業主の経営資源を継承するだけでは無く、事業の拡大、事業利益の最適化を目指す必要があります。ここでは、・人(経営)の面、・資産の面、・知的資産の面、・新たな経営ビジョンの具体化(事業承継後の事業計画の作成)から整理をしていきます。

2.9 事業承継後の手続きと対策(人(経営)の面から)

後継者は、経営権を持つと同時に、円滑に事業を遂行する必要があります。事業承継後、経営者として行う項目として、人員の掌握、後継者の一層の教育、先代の処遇について見ていきます

(1)人員の掌握

従業員は、雇用されています。事業主が代わると新たな事業主との雇用関係が始まります。事業承継前に事業の方向性、人事の処遇などの説明は受けていると思いますが、従業員は、新たな事業主に対して、様々な面で期待と不安を持ちます。後継者としても、従業員に対し、先代と同様な信頼関係を維持し、事業への貢献を期待します。まずは、新たな事業主として、次のことから始めることが必要です。

・経営理念に基づいた経営方針を明確に伝えます。

・従業員、パート等と新たな労働契約を結びます。

この機会に従業員と直接、雇用内容・期待する役割について、改めて、相互に確認を行い、後継者が行う経営への協力を求めます。さらに、指揮命令系統、社内ルールの確認と変更する部分があればその説明を行うことも重要です。このようなことを通して、後継者がリーダーシップを発揮する上で従業員との信頼関係を構築することが大切です。

(2)後継者の一層の研鑽

後継者は、自身のキャリア、先代から直接授かる経営ノウハウ、先代からの人脈・情報などを拠り所として、経営者としてスタートを切ります。

ただし、承継した事業の経営基盤を盤石にしていくためには、さらなる経営に必要な業界情報の取得、人脈作り、事業のブランド化、技術力・ノウハウの取得、人材の養成・確保など経営力の底上げが必要になります。特に、先代が握っていた財務面、資金繰り面は重要です。まずは、先代から引継ぎを受けた財務、資金繰りをしっかりと把握しましょう。そのためには、財務、資金繰り、経理といった基礎的な知識を身に付け、承継を受けた事業の財務等を見ていきます。さらに、財務、経理などの担当者からレクチャーを受けることも必要です。その上で、幅広く経営を見ていきます。具体的には、後継者自ら、業界内の研修会、会合、また、中小企業支援機関が実施する講習会、セミナーなどへの出席を通して、人脈を広げること、また、専門性、幅広い経営の知見の修得が求められます。このような活動を通して、地道に、後継者として経営の力を磨きあげ、先代に匹敵する経営者を目指す必要があります。

(3)先代の処遇

事業承継前に、先代事業主と後継者の間では、承継後の処遇について何らかの約束事が決められていると思います。承継前の手続きの章では、先代を処遇するケースとして、(イ)先代事業主は完全に事業から手を引いて、隠居できるケース、(ロ)「相談役」等一定期間アドバイスをする立場に残るケース、(ハ)代表者は変わったけれど、先代事業主が何事にも口を出すことをやめられないケース、などがありました。

特に、(ロ)は、先代事業主は、承継前に決めた期間の範囲内で、後継者への助言を行うこと、(ハ)は、他の家族、士業関係者を交えて、期間と役割を明確にすることが重要です。

(赤石 悦男)