第17回 3.1 親族外承継のメリット・デメリット

3.親族外承継

親族内に適切な後継者がいることが理想的ですが、いない場合は、親族外に引き継ぐことになります。その場合、従業員のなかに適任者がいる場合はその人物に承継することになりますが、そこにもいない場合は、後継者人材バンクや後継者マッチングサイトの活用が考えられます。ここでは人材バンクで出会った後継者も含め(事前に仕事を手伝わせることを念頭に)、親族外の人材への事業承継を考えます。

事業譲渡(M&A)については4.事業の譲渡で説明します。

3.1 親族外承継のメリット・デメリット

親族外承継には、親族内承継と比較した場合にメリットおよびデメリットが存在します。オーナー経営者が、親族内承継と親族外承継のどちらを選択すべきかを判断するに当たっては、メリット・デメリットをしっかりと理解しておくことが大切です。

(1)親族外承継のメリット

親族外承継の最大のメリットは、後継者選択の幅が広がる点にあります。親族内だけに目を向けていては、後継者として真に必要な素質を持つ人材を見つけられるとは限りません。この点、親族外承継も視野に候補者の選定を進めることによって、事業の維持・発展を第一に考えた事業承継を実現できる可能性が高まります。

(2)親族外承継のデメリット

これに対して、親族外承継には乗り越えなければならない、次のようなデメリットが存在します。

① 後継者の人柄や能力を十分に把握できない場合がある

親族外承継を完了してみたら、期待していたほどには人望が集まらない、事業の成果も上がらないなど、結果として事業が傾いてしまうという事態も考えられます。そのため、可能な限り事前に後継者候補とコミュニケーションをとり、後継者候補の真の姿を知ろうとすることが大切です。

② 後継者の側で事業譲渡の資金を準備する必要がある

後継者は事業譲渡の対価としてまとまった資金を用意する必要があります。親族外承継の場合には、後継者が必ずしも十分な資力を有していない可能性があります。金融機関からの融資などで対応できるかどうか、事前に十分計画を立てておく必要があります。

③ 債務の引き継ぎが問題になる

先代経営者が債務を負っている場合、先代が全てを持って行ってくれれば問題はないが、資産の譲渡と債務がワンセットという条件で事業を譲渡する場合がある。後継者がこの債務の負担が重いと感じて、円滑な親族外承継を妨げる要因になるおそれがあります。

親族外承継を行う前に、上記の条件について先代および金融機関とコミュニケーションをとり、後継者の負担があまり多くならないようにするなどの調整が必要になる場合があります。よく話し合って、後継者の納得を得るプロセスが必要となります。

(山﨑 肇)