第18回 3.2 事業承継前の手続き(計画)
3.2 事業承継前の手続き(計画)
(1)経営面からの計画
経営面からの計画については、第5回 2.1 事業承継前の手続き(人(経営)面からの計画)が参考になります。親族外についても本質は同じです。後継者の教育、先代の処遇、従業員への説明・雇用対策などが重要になります。
(2)資産面からの計画
資産面からの計画については。第6回 2.2 事業承継前の手続き(資産面からの計画)が参考になります。動産(在庫含む)・債権・不動産などを適正に評価しておくこと、債務の承継など事前に計画的に把握しておくことが大切です。場合によっては第三者により、債権・債務を正しく評価してもらうデューデリジェンスを行う必要もあります。
(3)譲渡方法の計画
個人事業主の事業用資産・債務を親族外に引き継ぐ方法は、売買、贈与のいずれかに当てはまります。
①売買(事業譲渡)
先代事業者の事業用資産(含、債権)・債務を、後継者に売却する方法です。先代には売却資金が入るメリットがあります。先代が得た利益は、譲渡所得として所得税の課税対象になります。この売買は簿価ではなく一般的に時価によるものとなるので、適正な時価の把握が重要になります。
②贈与
親族内事業承継だけでなく、親族外事業承継でも、先代の事業用資産・債務を存命のうちに、後継者に無償で譲るのが贈与です。先代に資金的余裕がある場合や、後継者が若く資金力が乏しい場合に選ぶ傾向があります。
贈与により、先代から後継者へと個人間で経済的価値が移転するので、受贈者の後継者に贈与税が課されます。ただし、一時に多額の事業用資産の贈与を受ける場合、相続税よりも少額の移転で高い累進税率(最高税率55%)が課税されるので、年数をかけての贈与移転、または、第7回でみた、暦年課税贈与や個人版事業承継税制を適用するなどの対策が必要です。
(4)使用貸借・賃貸借
例えば不動産のように資産の価値が大きい場合は、購入資金の確保が困難になる場合があるため、事業用資産の貸借により事業承継する方法があります。
①使用貸借
後継者(借主)の権利が弱いため、立退きを請求されると事業継続が困難になるリスクがあります。
②賃貸借
後継者(借主)の権利は法的に守られるため、事業の継続性において安定が図れます。
(山﨑 肇)